営業の仕事に従事している人々にとって、売上アップは避けては通れない至上命題です。
かつては自社の商品をひたすらアピールしているだけで顧客を獲得できたケースもあったかもしれませんが、テクノロジーが発達し、誰でも手軽に情報を入手できるようになった現代においては、そのような手法だけでは不十分です。
ここでは、営業が早期に成果を残すために必要となる仮説思考の考え方を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
仮説思考とはどういった概念か?
まず最初に、仮説思考の意味について見ておくことにしましょう。
仮説思考の「仮説」というのは、明確な答えが分からない状態において、入手可能な様々な情報を駆使して、自分なりに解決策と思われるものとして推察した仮の結論です。
あくまでも推察に過ぎないため、必ずしもそれが正しいとは限りませんが、このような仮説を用いながら本物の解決策に近い答えを導き出していく思考方法が仮説思考と呼ばれる概念です。
この仮説思考は、もともとは、問題を発見し、解決するためのスキルを向上させるために提唱されました。
そのため、営業の仕事に限らず、様々なシチュエーションで役に立つものであるという点を理解しておくと良いでしょう。
営業の仕事をするうえでは、顧客が何を求めているのかが分からないといった状況に頻繁に遭遇します。
そのような場合に、いちいち思考停止に陥っていたのでは、到底売り上げアップは見込めません。
一方、仮説思考を用いた営業スタイルを身に着けていれば、自分なりに様々な仮説を立てて、その事態を打開していけるはずですので、以降ではその有用性について順を追って見ていくことにします。
なぜ仮説思考が求められるようになったのか?
売上の拡大のために、仮説思考を用いた営業スタイルが必要になってきている背景には何があるのでしょうか。
この問いについての答えは必ずしも一つだけではありませんが、もっとも大きいのは情報社会の到来によって商品やサービスの選択権が顧客側に移ってきたということです。
かつては、顧客が同じような商品やサービスをいくつか比較検討しようとしても、思うように情報を集められずに、結局提案されたものを受け入れるしかないという状況が珍しくありませんでした。
そのような状況下では、顧客のニーズを細かく把握せずに、ひたすら見込み顧客に電話をかけて自社の商品等を売り込むというプッシュ型の営業を行っているだけでも、それなりに契約を獲得できたのです。
それが、インターネットの登場によって顧客が複数の商品などを容易に見比べられるようになったことで、いくら営業がアピールしてもそれよりも良さそうなものが他にある場合には、簡単に契約してもらえなくなってきました。
従来のように、ひたすら自社の商品の話だけをしていたのでは、顧客に受け入れてもらえないようになってきたのです。
顧客からすると、自分たちの都合だけで商品を売り込んでくる営業と契約するインセンティブはありませんので、そういった相手に必要としてもらうためには、プッシュ型の営業スタイルから脱却して、顧客が抱えている各種の課題に対するソリューションを提供できる提案型の営業スタイルに移行する必要があります。
提案型の営業スタイルにおける仮説思考法2つ
提案型の営業を行って契約を獲得するために重要となるのは、いかにして顧客の課題を正確に把握するかです。
当然ながらそういった課題は外部には公表されていませんので、営業としては様々な状況を踏まえて自分なりに推察するしかありません。
その際に、仮説思考の考え方が非常に役に立つのです。なお、仮説思考を用いて顧客の課題を導く方法には、大きく2つのやり方があります。
1.高い精度の仮説を1つたてる
一つ目は、はじめに可能な限り多くの情報を集めたうえで、高い精度で仮説を導いていく方法です。
この方法のメリットは、短時間で一気に正しい課題にたどり着けるという点ですが、一方で導き出した課題が正しくないものであった場合には、また一から検証し直さないといけない場合もあるという点がデメリットです。
2.仮説を複数たてて検証していく
二つ目のやり方は、情報を集めながらいくつもの仮説を立てて、一つずつ正しいかどうか検証していくというものです。
最終的に正しい仮説にたどり着ける可能性が高いというのがメリットですが、それまでに時間がかかるという点がデメリットと言えるでしょう。
これらは、どちらかの方法しか使えないというわけではありませんので、状況に応じて使い分けることが大切です。
なお、仮説思考を用いる場合には、仮説を立てただけで仕事ができたような気になってしまわないようにしなければなりません。
あくまでも、仮説が正しいかを確かめたうえで、それに対するソリューションを提供して契約を受注するというのが目的ですので、仮説を立てたら、次にそれに基づいて顧客にアプローチするということを忘れてはなりません。
良い仮説とは?必要な思考のコツを解説
仮説思考を使った営業を展開するためには、良い仮説を立てるためのスキルを身に着けておかなければなりません。
ここで良い仮説というのは、集めた情報を分析して十分な深度をもって立てられている仮説や、自分が顧客に対して行おうとしているアクションに紐づいている仮説、顧客の目線をより良い方向に向けさせられる仮説などです。
1.十分な深度をもって立てられている仮説
一つ目の十分な深度をもって立てられている仮説というのは、集めた情報を見て誰もが思いつく仮説ではなく、それらを様々な角度から分析し、深堀することによって導かれるものです。
誰もが分かる仮説を顧客に伝えても、たいして関心を示してもらえるわけはありません。
顧客自身も気づいていないような深い考察に基づく仮説を提示することによってはじめて顧客に興味を持って聞いてもらえるようになるのです。
例えば、ある見込み顧客の市場シェアの伸びが法人顧客の場合では3パーセントであるのに対し、個人顧客の場合には10パーセントであったとしましょう。
これを額面通りに受け止めれば、当該顧客は法人顧客の開拓が課題であるという仮説が立てられますが、それは誰が見ても分かるものですのでいちいち検証するまでもありません。
むしろ、隠れた課題は、個人顧客に対する市場シェアが10パーセントもの高い伸びを示しているという方にあるかもしれないのです。
その事実をさらに掘り下げて見ていくと、シニア層から高く支持されているという事実が見えてくるかもしれませんし、さらにその背景には、彼らが抱える加齢による何らかの悩みの解決手段として当該顧客の商品が好まれているという状況が存在する可能性があります。
そこまで掘り下げたうえで、その仮説の検証を行い、正しそうであるという結論が得られれば、次にその仮説に基づくソリューションを考える必要があります。
顧客に対して、よりシニア層の悩み解決に役立つ商品づくりに役立つ素材を提案するといったことが考えられるでしょう。
2.自らが予定するアクションに紐づく仮説
二つ目の自らが予定するアクションに紐づく仮説の活用方法は、例えば、顧客に対してマーケティングコンサルティングを提案しようとする場合に、その顧客が営業上の何らかの問題を抱えているという仮説を立てて、それが確からしいことを確認した上で行動を起こすというものです。
顧客が営業上の悩みを抱えているという確度ある仮説が立てられるのであれば、いかに自社のサービスがその解決に役立つかをアピールするだけで関心をもって話を聞いてもらえるでしょう。
3.顧客の目線をより良い方向に向けられる仮説
三つ目の顧客の目線をより良い方向に向けられる仮説というのは、それを示すことによって顧客が新たな気づきを得られるようなものです。
そのような仮説を提示できる営業担当者は、顧客から重宝される可能性が高くなるため、結果的に商談を持ちかけた際に採用してもらえるケースが多くなるというわけです。
仮説思考に適した営業担当者の特徴とは?訓練方法も紹介
仮説思考は、訓練をすれば誰でもそれなりに身に着けられるものではありますが、営業担当者の性格によって向き、不向きがある点に注意が必要です。
仮説思考に適した人の特徴
まず、仮説思考に向いている人の特徴は、積極的に色々な経験をしたいと考える人や、与えられた情報を使ってイメージを膨らませることを好むような人などです。
また、他人の意見を否定するのではなく、それを踏まえて自分なりの意見を導き出せるような人も、仮説思考に向いています。
仮説思考に適さない人の特徴
一方、仮説思考に不向きなのは、何事につけても保守的で失敗やリスクを極力避けようとする人や、他人の評価に必要以上に敏感になってしまう人などです。
そういった人は、万が一、自分が立てた仮説が間違っていた時のことを心配するあまり、うまく仮説を立てられなかったり、仮説を立ててもそれを他人に話すのを躊躇してしまう傾向があるのです。
仮説思考を活用する際には、自分がどちらのタイプに属するのかを客観的に見つめるというのが重要となります。
もし向いていると感じるのであれば、積極的に仮説思考を使った営業スタイルを採用すべきですが、そうでないのであればいきなり仮説を立てようとしてもうまくいかない可能性があるからです。
もっとも、もし自分が仮説思考に向かないと感じる場合でも、すぐにあきらめてしまう必要はありません。
不向きであることを自覚して訓練するようにすれば、十分に成果を出せる可能性はあるのです。
仮説思考の訓練方法
仮説思考の訓練にはいくつかのやり方がありますが、その中でおすすめなのは、顧客を取り巻く事実や情報に触れた場合に、なぜそのようになっているのかを自分に問いかけるようにするというものです。
その際、「なぜ?」を一回で済ませるのではなく、最低でも5回くらい繰り返すようにしましょう。
例えば、顧客の売上が伸びていないのはなぜなのかを考えた場合に、商品が顧客のニーズに合っていないからという答えが考えられるのであれば、次に、なぜニーズに合っていないのかを考えるという作業を反復継続して行うようにするのです。
最初は考えているうちに頭が痛くなってくるかもしれませんが、慣れてくると様々な考えが浮かんでくるようになるはずです。
そうなれば、仮説を立てる作業も苦痛に感じなくなるでしょう。
仮説思考と営業支援ツールの組み合わせで顧客を獲得しよう!
仮説思考についてお伝えしてきましたが、重要なのは確度の高い顧客に対して仮説思考を用いた質の高い提案を行うことです。まずは、自社の商品やサービスについて興味を持ってくれる顧客を探し出す作業が必要です。
そのためには質の高い営業リストが欠かせませんが、人の手でリストを作成するのは時間がかかってしまうため、営業リスト作成ツールや営業メール自動送信ツールを利用するとよいでしょう。
おすすめのツールはRPAの技術を使って、新規顧客の獲得を効率化できる「GeAIne(ジーン)」です。RPAとは、「Robotic Process Automation」の頭文字を取った言葉で、「コンピューターを使って行う定型的な作業をロボットにより自動化すること」を意味します。
GeAIneを活用すれば、企業のWebサイト上にある問い合わせフォームやメールアドレスに対して、自動的にアプローチできます。
また、顧客リストをアップロードするだけで自動的にグルーピングしてくれる機能や、顧客のメール開封率やリンクのクリック率などを比較・分析する機能もあり、質の高い情報で営業活動をサポートしてくれます。
作業的な業務に費やしていた時間を仮説思考を用いた提案をたてる時間に変えることもできますので、新規顧客開拓や業務効率化を考えている方は検討してみてはいかがでしょうか。
仮説思考はこれからの営業に必須のスキル
以上で見てきたように、情報社会化が進む現代においては、顧客の問題を正しく把握するための仮説思考型の営業スタイルは、営業に従事する人にとって必須のスキルになりつつあります。
不向きな人でも少し訓練をすれば誰でも身に着けられるものですので、営業の世界でキャリアアップを図っていきたいと考えている方は、積極的に仮説思考を身に着けるようにするとよいでしょう。