ダイレクトメール(DM)は個人や企業などの見込み顧客や既存顧客に直接アプローチする事が可能なマーケティングツールです。
これまで顧客へのアプローチはダイレクトメールや電話が主流でしたが、スマートフォンの普及により、ホームページやソーシャルメディアなどを活用した施策も増えてきています。
費用対効果の高い効果的なダイレクトメールによるマーケティングの為に最新のデータを紹介します。
ダイレクトメールのレスポンスのカギは開封率
ダイレクトメールの有益なポイントは、顧客に提供したい商品やサービスの情報を企業側が望む形で提供できることです。
もちろん同封物を増やせば増やすほどツールの制作費や送料などの経費も嵩むため、費用対効果のバランスにより適正コストは定まってしまいますが、ソーシャルメディアやメールマガジンと異なりテキスト量や画像サイズの制限が少ないのも事実です。
しかし、顧客にとってメリットのある情報を掲載したり、過去にレスポンスの高かった効果のあるツールを同封したりしても、ダイレクトメールをそもそも開封してもらうことができなければ効果はありません。
自宅に届けられるダイレクトメールは1週間で約6.7通もあります。家庭に届けられるダイレクトメールであれば世帯主や配偶者、子供など宛先もさまざまです。
そのほとんどが、新商品やサービスの案内、特売・キャンペーンの案内となっています。
本人宛のダイレクトメールの開封率は74%となっていますが、毎日のように家族世帯に届けられているダイレクトメールの開封率は約57%と開封されずに破棄されていることが多いのが現状です。
ダイレクトメール開封率を上げる方法とは?
ダイレクトメールにははがきや封書などさまざまな形状がありますが、届けられたダイレクトメールの内38%がはがきタイプとなっており、その次に封書、A4サイズはがき、大型封書の順となっています。
はがきタイプは封書に比べデザイン費・印刷費・封入費・配送費などが安くなるため、既存顧客だけでなく、休眠顧客や見込み顧客へのダイレクトメールとしても活用しやすい形状ですが、掲載できる情報量が少ないため多くは4面や6面の圧着DMなどが送られています。
ダイレクトメールの開封の有無を決めるポイントとしては既知の企業であるかどうかです。
過去に取引があった企業からのダイレクトメールの場合は「クーポン・プレゼント・セール・新商品」など具体的なメリットのある情報の開封率がアップしています。
過去に取引がなかった企業からのダイレクトメールの場合でも「クーポン・プレゼント・セール・試供品」など顧客にとってもメリットが明確であればあるほど、開封率があがるためダイレクトメールの効果がデータでも明確になっています。
また、誕生日や年齢・性別に関わるサービス情報や過去の購入商品に関連したクーポンなどパーソナライズされたダイレクトメールの開封率は他のダイレクトメールに比べ2倍以上の開封意向がみられました。
過去の利用歴がダイレクトメールの開封率に影響する
実際に届いたダイレクトメールを開封するかどうかは、過去にその企業の商品やサービスを利用したことがあるかないかによって大きく異なります。
過去に利用歴がある会社からのダイレクトメールの場合94%が目を通しているのに対し、利用歴のない会社の場合76%となっています。
過去に利用歴がある会社の場合は開封率が高い傾向にありますが、よりダイレクトメールの効果を高めるためには、実際に商品やサービスを利用した時に不満を感じさせないように満足度を高めておく必要があります。
クーポンやキャンペーンなど具体的なメリットを提供しても、もともとの商品やサービスに対し不満を持っている場合はダイレクトメールの効果が下がります。
過去に商品やサービスを利用したことがない場合にはクーポンやキャンペーンの情報だけでなく、提供する商品やサービスについてのメリットを効果的に提示する必要があります。
圧着ハガキや封書の場合は開封させるために表面に顧客の興味を喚起する情報を掲載することで開封率を高めることが可能になります。
ダイレクトメールの効果を高める顧客の行動喚起
ダイレクトメールの効果を図る時には実際に商品を購入したり、資料を請求したりするレスポンスで数値化することができますが、インターネットが普及している現在では単純な実売レスポンスだけでなく顧客の行動喚起による効果も評価する必要があります。
例えば、ダイレクトメールを開封した後で実際に購入したりサービスを使用したりした人は1.5%の場合であっても、インターネットで調べた人は7.5%、店舗に行った人は2%、家族や知人との会話の中で話題にした人は4.1%もいました。
特に20代~30代の若年層はダイレクトメールを受け取ってから実売以外の行動を起こすことが多い傾向にあります。
インターネットを閲覧した時にコーポレートサイトやブランドサイトだけでなく、口コミサイトやソーシャルメディアを閲覧したり、書き込んだりする事も考えられます。
ダイレクトメールを届けた人以外への影響を鑑みると、紙媒体であるダイレクトメールからWebメディアへ誘導することでよりダイレクトメールの効果が高まる可能性もあります。
商品やサービスによってダイレクトメールの発送方法を検討
ダイレクトメールを送付する対象としては、すでに商品やサービスの利用歴がある顧客だけでなく、他の会社のダイレクトメールにチラシや商品やサービスの情報を同封する方法があります。
また、郵便局やポスティング業者などのサービスを利用したエリア内に配布する無記名のダイレクトメールなど投函方法はさまざまです。
同じ形状のダイレクトメールであっても、誰から届けられたのかによって開封率も変化することが分かっています。
もともと商品やサービスを利用している会社から届けられたダイレクトメールを受け取ってもよいと思っている人は74.4%もいるのに対し、無記名で投函されたダイレクトメールの場合は受け取っても良いと思っている人は14.6%、受け取りたくないと思っている人が68.3%とダイレクトメールを受け取ることにマイナスのイメージを持っていることが分かります。
例えばリピート率が高くレスポンス率が低くても広範囲にダイレクトメールを配布することで費用対効果の目標値を達成する商材の場合は自社の顧客リスト以外のダイレクトメールの活用も効果的ですが、商材や商品によってはダイレクトメールの発送ターゲットを細かくセグメントする必要があります。
インターネットとダイレクトメールのクロスメディアの可能性
ダイレクトメールの新たな活用としてインターネットとの連動があります。
商品やサービスの実際の購入・利用手段として電話ではなく24時間低コストで受付ができるホームページなどを利用するのは当たり前になってきていますが、電話注文よりホームページを利用した方が割引率やポイントの付与率を高くすることでよりインターネットでの集客効果を高めることができます。
また、詳細な商品やサービスの情報をホームページなどで提供し、ダイレクトメールをハガキなどコストが低いツールで作成することで経費を下げることも可能です。
実際の調査でもWebへのアクセスを促すダイレクトメールを受け取ったことがある人は64%、実際にアクセスした人は40%もいました。
男性は30~40代、女性は20代~40代でWebへ誘導するダイレクトメールを多く受け取っていました。世帯年収別ではM層(年収500万円以上)が一番多く、次いでH層(年収900万円以上)となっています。
ダイレクトメールからインターネットへ顧客を誘導する場合はWebメディアとの親和性の高い世代や商品・サービスであるかどうかが効果に影響するといえます。
広告媒体としてのダイレクトメールの現状
スマートフォンの普及により情報の収集に日常的にインターネットが活用されるようになっています。
企業の広告費も当然のようにインターネット広告が拡大を続けており、雑誌や新聞、テレビ、ラジオなどの広告費は減少傾向にあります。
しかしながらダイレクトメールの広告費は2017年3,701億円、2018年3,678億円、2019年3,642億円と大きな影響がみられません。
一昔前は、多くのリストに対し広域的にダイレクトメールを送付していましたが、現在はより効果的なダイレクトメールの送付が企業の課題になっています。
新規顧客や見込み顧客、休眠顧客、リピート顧客、優良顧客などセグメントされた顧客区分や提供している商品やサービスの特性に合わせた顧客リストに対し、いかに費用対効果の高いダイレクトメールを送付できるかが重要視されています。
例えば顧客の購買傾向に即した商品の印字を行ったり、AIにより独自のセグメント条件をつけたりするなどの取り組みも増えています。
ダイレクトメールとクロスメディアの可能性
ダイレクトメール単体だけでなく、Eメールやホームページ、動画、ソーシャルメディアなど複数のコンテンツを連動させることでよりダイレクトメールの効果を高めるプロモーションも増えてきています。
ダイレクトメールを送付しホームページなどへ誘導する施策は、主流になりつつありますが、ホームページで収集したデータを元にダイレクトメールを送付する事例も増えており、2020年の全日本DM大賞でホームページの閲覧履歴からセグメントしたダイレクトメールが最大2.5倍のコンバージョンを獲得した事例などが報告されています。
また、企業の規模によっては多様化するWebコンテンツの制作や詳細なセグメント、データ分析が難しい場合もあります。
AIなどの活用ができなくてもキャンペーンを告知するダイレクトメールを送付した後に、キャンペーン終了間近の案内をメールマガジンなどで送付するなど小さなアプローチであってもよりダイレクトメールの効果を高めることが可能です。
顧客の世代層によってはキャンペーンの告知をソーシャルメディアで行いダイレクトメールやホームページのLPページなどでレスポンスを獲得するなど費用を大きくかけずにクロスメディアを行うことができます。
ダイレクトメール以外のメディアも活用してコンバージョンを獲得しよう
ダイレクトメールの効果を最大化するには、印刷費や配送費のコスト削減だけでなく、ターゲットにリーチする顧客のセグメントがカギになります。
さらに、ダイレクトメールからWeb、Webからダイレクトメールなどこれまでの概念に縛られない、自社の商品・サービス、顧客属性に即した新たな集客施策を見つけることがこれからのマーケティングに必要です。
特定の広告手法にこだわらずに、様々な角度から顧客への最適なアプローチを探っていきましょう。